正直に言うと、あのエアコン工事の請求書を見たとき、最初に思ったのは「高い」とか「ぼったくりじゃないか」ではなかった。
よく分からない。
それが一番近い感覚だった。
金額は大きい。
でも、それ以上に気になったのは、そこに書いてある項目の意味が、ほとんど分からなかったことだった。
エアコン本体の値段は分かる。
家電量販店でも見てきたし、だいたいの相場感もある。
ただ、請求書の大半を占めていたのは「工事費」だった。
配管工事、電気工事、その他もろもろ。
文字は読めるのに、内容が頭に入ってこない。
「まあ、プロがやる工事だから、こんなもんなんだろう」
そのときは、そうやって自分を納得させた。
でも、あとになって思い返すと、納得したというより、考えるのをやめただけだった気がする。
この工事で、いったい何をして、どこが難しくて、なぜこんな金額になるのか。
その中身を、自分は何も知らなかった。
このとき感じた小さな違和感が、あとからじわじわ効いてくることになる。
正直、この請求書はよく分からなかった
改めて請求書を見返してみても、やっぱり最初に出てくる感想は同じだった。
これは何の金額なんだろう。
項目は並んでいる。
でも、それぞれがどんな作業で、どれくらい時間がかかって、どこが大変なのかが、まったく想像できなかった。
エアコン本体なら話は早い。
型番があって、性能があって、価格も比較できる。
一方で、工事費はそうじゃない。
同じ「エアコン工事」と書いてあっても、中身が見えない。
自分が分からなかったのは、金額の妥当性じゃなかった。
判断するための材料を、何も持っていなかったことだった。
高いのか、普通なのか、むしろ安いのか。
それを考えるスタートラインにすら立てていなかった。
「工事なんて、業者に任せるしかない」
その考え方が間違っているとは思わない。
ただ、任せるにしても、自分が何を分かっていないのかくらいは知っておきたかった。
この時点で、ようやくそんな気持ちになっていた。
エアコン工事って、何をしている工事なんだろう
エアコン工事と聞いて、当時の自分が思い浮かべていたのは、正直かなり単純なものだった。
室内機を壁に取り付けて、室外機を置いて、配管をつないで終わり。
だいたいそんなイメージだったと思う。
でも、請求書を前にして「よく分からない」と感じたあと、そのイメージが急に頼りなくなった。
本当に、それだけの作業で、この金額になるんだろうか。
それとも、自分が知らない工程がまだあるんだろうか。
そう思って、初めて「エアコン工事って何をやっているんだろう」と調べ始めた。
メーカーの説明、業者のサイト、体験談。
断片的な情報を拾っていくうちに、少しずつ見えてきた。
エアコン工事は、ひとつの作業じゃない。
いくつもの工程が重なって、やっと成り立っている工事だった。
しかも、その工程の中には、
「失敗したらやり直しがきかないもの」や
「間違えたら危ないもの」も含まれていそうだった。
ここでようやく、
自分が思っていたより、エアコン工事はずっと複雑かもしれない
と感じ始めた。
本体設置より「工事」が高い理由が気になった
請求書を眺めながら、どうしても引っかかっていたのがここだった。
エアコン本体よりも、工事費のほうが高い。
家電量販店でエアコンを見ていたときは、どうしても「本体の値段」が基準になる。
何畳用か、性能はどうか、セールかどうか。
だから、工事はあくまで付属品みたいな感覚だった。
でも実際の請求書では、その感覚が完全にひっくり返った。
主役は本体じゃなく、工事だった。
なぜ、ただ取り付けるだけに見える作業が、ここまで高くなるのか。
調べ始めて分かったのは、
工事費という一行の中に、いろいろな作業がまとめて押し込まれている、ということだった。
配管の処理、穴あけ、真空引き、配線、動作確認。
それぞれは短い言葉で書かれているけれど、どれも失敗できない工程らしい。
しかも、設置する場所や建物の条件によって、手間も難しさも変わる。
ここでようやく、
工事費が高いのではなく、自分が中身を知らなすぎただけかもしれない
と思い始めた。
調べていくと、作業がいくつかに分かれていることに気づいた
調べ始めたときは、正直「答えがひとつ」だと思っていた。
エアコン工事=取り付け作業。
その中身を知れば、全体が理解できる。
そんな感覚だった。
でも、情報を拾っていくうちに、それが違うと分かってきた。
エアコン工事は、ひとつの作業じゃない。
工程がいくつも分かれている。
たとえば、室内機の固定ひとつ取っても、壁の状態や下地でやり方が変わる。
室外機の置き方も、ベランダなのか地面なのかで変わる。
配管を通すための穴あけ。
配管の取り回し。
ドレン(排水)の処理。
配管の接続と、漏れがないかの確認。
さらに「真空引き」という作業も出てきた。
当時の自分には、この言葉だけでだいぶ未知だった。
要は、エアコンを動かすために必要な条件を、順番に整えていく工事なんだな、と少しずつ理解できてきた。
そして、その工程が見えてくるほど、
請求書の一行にまとめられていたものの多さが、逆に怖くなってきた。
自分は、あの一行の中身を、ほぼ何も知らずに払っていた。
ここまで来て、やっと「工事費が高い/安い」という話じゃないと思った。
まずは工事の中身を知らないと、何も判断できない。
その中に「資格が必要な作業」が混じっていた
工程をひとつずつ見ていく中で、少し引っかかる言葉が出てきた。
「有資格者」「法律」「電気工事」。
最初は、注意書きくらいの感覚で流していた。
専門的な世界だから、そういう言い回しがあるんだろう、くらいに思っていた。
でも、調べ直してみると、その扱いが思っていたより重いことに気づいた。
エアコン工事の中には、
資格を持っていない人がやってはいけない作業が含まれている。
具体的には、電源に関わる部分や、配線の処理。
ここは「経験があるから大丈夫」では済まされないらしい。
このあたりで、ようやく視点が変わった。
エアコン工事は、
「器用な人がやればできる作業」ではなく、
法律で線が引かれている作業なんだ、という感覚に近づいた。
請求書に書かれていた「電気工事」という文字が、
このとき初めて、ただの項目名じゃなくなった。
知らないまま通り過ぎていたけど、
ここには明確な前提条件があった。
そして、その前提条件を示す存在として、
ある資格の名前が、何度も出てくるようになった。
ここで初めて「電気工事士」という資格の存在を知った
「資格が必要な作業がある」というところまで来て、
じゃあ、その資格って何なんだろう、となる。
そこで出てきたのが、電気工事士という名前だった。
正直、言葉自体は聞いたことがあった。
でも、それは「なんとなく知っている単語」だった。
自分の生活とつながっていなかったし、
ましてエアコン工事と結びついていなかった。
ところが、調べれば調べるほど、この資格の名前が出てくる。
しかも、注意書きみたいに添えられているのではなく、
前提条件として出てくる。
ここで初めて、資格の存在が「遠い世界の話」じゃなくなった。
エアコン工事は、家電を買って終わりじゃない。
工事が必要で、工事の中には電気に関わる作業がある。
そして、その作業には資格が必要。
こうやって並べると当たり前に見えるのに、
当時の自分は、そこがまるっと抜けていた。
請求書の中にあった「電気工事」という文字が、
資格の話につながった瞬間だった。
この時点では、まだ「じゃあ取ろう」とは思っていない。
ただ、知らなかった世界の入口に立った、という感覚があった。
エアコン工事は、誰でもできる作業じゃなかった
ここまで調べてきて、一番大きく変わったのは、エアコン工事に対する見方だった。
以前は、
「専門業者がやる作業」
くらいの認識だった。
それが、
法律で区切られた作業
だと分かってくると、話が違って見えてくる。
器用かどうか、経験があるかどうか、という話じゃない。
やっていい人と、やってはいけない人が、はっきり分かれている。
電源に触れる。
配線をつなぐ。
通電を前提にした状態を作る。
これらは、失敗したら困る作業、というだけじゃなく、
勝手にやってはいけない作業だった。
DIYが好きな人なら、
「自分でやれそう」と思う気持ちも分かる。
でも、エアコン工事の一部は、
そういう気持ちとは別のところに線が引かれている。
ここでようやく、
エアコン工事という言葉の裏に、
責任と前提条件がセットで存在している
ことが見えてきた。
誰でもできる作業じゃない。
だからこそ、工事費が発生している。
そう考えると、
請求書の見え方も、少しずつ変わってきた。
知らないまま払っていたことが、少し怖くなった
ここまで調べてきて、
「高かったのかどうか」よりも、別の感情が出てきた。
それは、少しだけど、確かに怖さだった。
騙されたとか、ぼったくられたとか、そういう話じゃない。
ただ、自分はあのとき、
何も分からないまま判断して、何も分からないままお金を払っていた。
エアコン工事には、
資格が必要な作業が含まれていて、
法律で線が引かれていて、
失敗したら危険な工程もある。
それを知らずに、
「まあ、プロに任せているから大丈夫だろう」
で終わらせていた。
もちろん、プロに任せる判断自体は間違っていない。
でも、分からないことを分からないままにしていた、
その状態が、あとから考えると少し気持ち悪かった。
もしトラブルが起きていたらどうなっていたんだろう。
もし手抜き工事だったら、自分は見抜けただろうか。
答えは、たぶん無理だった。
そう考えると、
これはエアコン工事だけの話じゃないな、と思い始めた。
この時点では、資格を取るつもりはまだなかった
ここまで調べて、電気工事士という資格の存在を知って、
それなりに衝撃はあった。
でも、この時点では、
「じゃあ自分も取ろう」とまでは思っていなかった。
正直に言えば、
資格はプロが持つもの、
自分は依頼する側、
その線引きはまだはっきりしていた。
年齢のこともあったし、
仕事も別にある。
今さら新しい資格に挑戦する、という発想自体が現実的じゃなかった。
ただ、それでも一つだけ、確実に変わったことがある。
エアコン工事を、
「よく分からないけど任せるもの」
として見ることは、もうできなくなっていた。
資格が必要な理由。
法律で線が引かれている意味。
そこに責任が発生していること。
それを知った以上、
以前と同じ感覚には戻れない。
このときはまだ、
あくまで「知っただけ」だった。
でも今振り返ると、
ここが、確実に分岐点だったと思う。
この先、
電気工事士という資格が、
自分の生活や考え方に、少しずつ入り込んでくることになる。
まとめ|調べただけで、見え方は変わった
この時点で、自分はまだ電気工事士になるつもりも、資格に挑戦する覚悟もなかった。
ただ、エアコン工事を「よく分からないけど任せるもの」として見ることは、もうできなくなっていた。
請求書の違和感から始まって、
工事の中身を調べて、
その中に資格が必要な作業があると知った。
それだけのことなのに、
見え方は確実に変わった。
高いか安いか、得したか損したか、という話ではない。
判断するための前提を、初めて知った、それだけの話だ。